2024/04/02

No.5 弊社CTOが紹介する『イスラエルとは』

東京国際健康産業が力を入れていることの一つに、イスラエルの革新的医療機器の日本導入があります。日本の医療機器の市場は世界で見ても2-3位の大きさがあります[1]。また世界で最も早く超高齢化社会を迎える日本の医療経済政策は、世界の注目の的です。少子化の危機が叫ばれていますが、日本は世界で人口第11位の国(2021年時点)です[2]。医療機器の市場としては未だ無視できない大きさです。

しかしながら、海外企業から見ると言語の壁が大きく、また特に大会社は(もちろん会社さんに拠りますが)平均的にみると社内決済に時間がかかることが多く、市場参入が難しい国という印象を持たれることも少なくありません。中国や台湾・香港といった周辺のアジアの国の方に、日本より先に製品が導入されているケースもよく見ます。

当社は小さい会社ながらも、貿易商社で長く中東に駐在していた者や、アメリカ企業との合弁会社を作っていたメンバーなど、海外の企業とのコミュニケーションに慣れたメンバーが在籍しています。イスラエルの企業から見て、我々の会社は付き合い易いと感じていただけるのか、よく日本市場参入についての相談を受けます。

イスラエルは人口950万人(2022年5月時点)[3]の、神奈川県くらいの小さな国なのですが、医療機器の分野だけでも、我々はすでに何十社ものスタートアップを見てきています。なぜイスラエルの健康・医療関連企業は世界から注目され、優れた機器を開発できるのでしょうか?大きな理由は、イスラエルの技術力と保険制度にあります。

イスラエルといえば、軍が強いことで有名ですね。大変悲しい事実ですが、軍が強いところは医療も強い、という相関が往々にして見られます。手術支援ロボット、Da Vinciの元の技術は、米軍での軍事応用(戦地での遠隔手術の実施など)を見据えたもので、軍の援助を得ながら開発されたものです[4]。実際、我々が紹介を受けた機器の中にも、イスラエル軍の”瓦礫の中から人を探す技術”を転用したという医療機器がありました。このように軍事技術をはじめとする技術力の高さがあります。

もう一つはイスラエルが持つ保険制度にあります。イスラエルは日本と同様、ほぼすべての国民が保険に入っています。HMO(Health Maintenance Organization) といわれる組織が4つあり、人口の98%の人がこれらのいずれかの組織の保険に加入しています[5]。HMO間の移動はあまりなく、またイスラエルは1990年代から電子カルテの導入に取り組んでいたため[6]、各HMOは各人の時系列を持つ医療データ(検診データを含む)をすべて持っています。被保険者は自分の医療データをスマホアプリなどで見ることもできます。

時系列の長期データでなくとも、すべての医療記録が一元管理(HMOごとではありますが)されている、という状態は医療機器メーカーの機器の検証を容易にしています。HMO自体がR&D部門をもっており、スタートアップとの連携・共同研究などを受け入れています。COVID-19のワクチン開発の臨床データ取得にイスラエルが選ばれていたことを覚えている方も多いのではないでしょうか?昨今では患者データを利用するAI医療機器も増えています。取り扱いがセンシティブな患者データを使った検証のハードルが低いことは、先進的な医療機器企業の成長を後押しすると考えています。

このような理由から、我々はイスラエル発の医療機器に着目しています。日本のアンメットニーズを満たす製品を導入することで、医療への貢献を目指します。

テルアビブの海岸。出張したときは、おおらかで平和な空気の国でした。早く事態が収束することを願ってやみません。

イスラエル出張の時に近くに来てくれた猫さん。少し日本の猫と顔が違う気がするにゃあฅ•ω•ฅ

<参考>
※2019年時点で2位ですが、3位のドイツとほぼ同率で、4位の中国の伸びが大きいため、現在は4位くらいかもしれません。
[1] KHIDI, “Medical Device Industry Information”, (2024-03-26参照)

[2] 外務省,”人口の多い国”, 外務省ホームページ,  (2024-03-26参照)

 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所, ”我が国医療機器・ヘルスケア産業における競争力調査調査報告書, 2021年3月,  (2024-03-26参照)

[3]外務省,”イスラエル基礎データ”, 外務省ホームページ,  令和5年3月10日,  (2024-03-26参照)

[4] Anthony Young, “Four Things to Know About Intuitive Before You Start Working Here”, Intuitive Surgical社ホームページ, 2022年12月15日, (2024-03-26参照)

[5] Amir Mizroch, “How Israel Turned Decades Of Medical Data Into Digital Health Gold”, Forbes, Mar 26, 2019, , (2024-03-26参照)

[6] 余田 知弘, “医療データを活用するデジタルヘルスケア(イスラエル)”, 日本貿易振興機構(ジェトロ)ホームページ,  2020年1月24日, , (2024-03-26参照)